釉薬(ゆうやく・うわぐすり)って聞いたことありますか?器の表面は釉薬をかけて焼き上げることで、ツヤのあるなめらかな感触やさらりとしたマットな質感、多様な色合いを表現することができます。釉薬の技法を知れば、焼き物の醍醐味をもっと身近に感じることができると思います。
焼き物づくりの大まかな工程
本題に入る前に、焼き物づくりの工程をご紹介します。焼き物は粘土を成形してから2回に分けて焼き上げます。釉薬がかけられるのは本焼きの前。絵付や装飾を施した状態で、液状の釉薬をうつわに塗ったり浸したりしてかけていきます。
< 焼き物づくりの工程 >
粘土づくり → 成形 → 乾燥 → 素焼き → 下絵付 → 釉かけ → 本焼き
(釉薬をかけずに本焼きする方法を「焼き締め」といいます)
釉薬とは?
釉薬とは焼き物の表面を覆うガラス質の層です。読み方は「ゆうやく」「うわぐすり」。原料は自然由来のもので、草木を焼いた灰や長石などの鉱物を砕き水で溶いて作ります。器を高温で焼くと素地の上に釉薬が溶け、表面がガラス質でコーティングされたり、粘土に含まれる金属成分との化学反応により味のある色合いが生まれたりします。
焼き物の印象を大きく左右する釉薬ですが、釉を施した器はガラス質で覆われることで強度が増したり、水や汚れが吸着しにくくなったりと実用性を高めるはたらきもあります。
色の表現は無限大
釉薬は原料やその配合により無数の色合いを表現することができます。裏を返せば、イメージ通りの色を作り出すことは難しく、微調整を繰り返しながら色を決めていくという非常に繊細な作業が行われています。
< 代表的な釉薬 5 種類 >
- 灰釉(かいゆう・はいぐすり)
草や木を焼いた灰が主な原料。灰の種類により乳白色なものから黄褐色、やや青緑がかったものまで、淡くも多様な色合いの器を見ることができる。
- 透明釉(とうめいゆう)
灰に長石を混ぜた透明度の高い釉薬。無色透明に仕上がるため、素地の白さを生かした白磁や絵付けを施す器に用いられる。
- 青磁釉(せいじゆう)
灰釉をベースに鉄分を配合したもの。還元焼成(酸素が少ない状態で焼くこと)により淡い青色に発色する。中国で発達した技法。
- 緑釉(りょくゆう)
透明釉に少量の銅を加えたもの。安土桃山時代の茶人、古田織部により作られた織部焼で頻繁に用いられたことから「織部釉」とも呼ばれる。
- 飴釉(あめゆう)
透明釉に鉄を混ぜたもの。酸化焼成(酸素が十分ある状態で焼くこと)により、光沢のある黄褐色(飴色)になる。鉄釉の一種。
陶磁器の醍醐味「景色」を楽しもう
釉薬をかけ高温で焼き上げる器は、同じように成形し同じ釉薬を使っても、炎の当たり方などにより一つひとつが違った表情に仕上がります。釉薬の流れにムラができたり、時にはヒビが入ったり。そんな焼き物の特性を日本では古くから器の「景色」と捉え、美しさを見出してきました。偶然生まれた陶磁器の「景色」。たまにゆっくり眺めてみれば、いつもよりちょっと器の奥深さを楽しめるかもしれません。